バーチャル空間にもパクリ禁止なの!?

 

 想像してみてください
 あなたはメタバース空間で友人とアバターショッピング中。

 

 目に飛び込んできたのは、有名ブランドそっくりのキラキラバッグ。
 でも、よく見ると本物ではなく、誰かが勝手にデザインを真似して作ったデジタルアイテムでした~。

 

 「え、それって違法じゃないの?」
 「いや、デジタルだからセーフなんじゃない?」

 

 そんな疑問に、ズバリ答えるのが、2023年に改正された不正競争防止法なんです。この法改正で、今までの常識はひっくり返されました。

 

コピー規制は「現実のモノ」だけだった!?

 これまでの不正競争防止法では、他人のオリジナルな商品形態(=形・模様・色彩など)をマネして、そっくりな商品を有体物として販売することが違法とされてきました。いわゆる「形態模倣行為の禁止」です。

 

 たとえば、ある企業が形状ユニークな加湿器を発売し、それにそっくりなデザインの模倣品を別の業者が発売した場合、それは違法行為でした。消費者が混乱してしまうためです。

 

 でも、このルールには“弱点”がありました。
 というのも、法律が対象にしていたのは「有体物」=実物の商品のみ。

 

 メタバースで売られるデジタルアイテムや、オンラインゲーム内のコスチュームは、 「触れられない=有体物でない」ため、規制できないという解釈だったのです。
 つまり、仮想空間は「パクリの無法地帯」だったんですね。
 そこで登場したのが、2023年の不正競争防止法の改正です。

 

改正でついに「デジタルの形態」も保護対象に!
 2023年の改正で、法はついにデジタル時代の現実に追いつきました。
 この改正で「 電気通信回線を通じて提供される商品 」、つまりネット上でやり取りされるデジタルアイテムも、「商品」として扱われることになりました。

(この画像は「不正競争防止法等の一部を改正する法律 【知財一括法】の概要」より引用したもの)

 

 たとえば、現実世界の高級ブランドが、メタバース内でも公式アバターアイテムを販売していた場合、それに酷似したバッグやアクセサリーを、無断で配布・販売すれば違法となる可能性が高いのです。

 

 また、人気ゲームの武器スキンそっくりのアイテムを、無許可で販売するケースも同様です。

 

 

意匠法・商標法とどう違うの?
 ここで気になるのが、「デザインなら意匠法で守れるのでは?」という疑問ですね。実は、意匠法 は「登録制」の法律。特許庁にデザイン(意匠)を出願して、審査を通過すれば初めて保護が始まります。そして保護期間は最長25年。強力だけど、 手間と時間がかかるのが特徴です。
 一方、 不正競争防止法の形態模倣規制 は「登録不要」。「発売されてから3年間」に限ってですが、誰でもすぐに活用できます。
 つまり、不正競争防止法は「スピード重視の即効型」、意匠法は「登録による長期保護型」。デザイン保護のスタイルが違うだけで、 どちらも協力して“パクリ”を防ぐ仲間なのです。

 


メタバースでも「まねしない」のが常識に
 経済活動の舞台は、もはや現実空間だけではありません。メタバース、VR、NFT、ゲーム空間…。あなたのアバターが身につけている服やアクセサリーも、れっきとした「商品」です。

 

 そしてそれを作った誰かがいて、 「創造したデザイン」を守る権利があるということです。
 法律は、時代の変化にあわせてアップデートされます。今回の不正競争防止法の改正も、そうした動きのひとつです。

 

 もし将来、あなたがクリエイターとして、メタバース用のオリジナルアイテムをデザインしたとき、そのデザインが誰かに無断で真似され、売られてしまったら、どんな気持ちになりますか?
 今や、「パクリはバーチャルでもNG」 。このルールを知っているだけで、きっとこれからの時代に強くなれます。 

 

 

最後にひとこと
 不正競争防止法は、ただの法律じゃありません。あなたの創造を守る盾です。
 今、メタバースでオシャレを楽しんでいるあなたも、明日はオリジナルデザインを生み出す側かもしれません。

 

 知ってるだけで、未来の選択肢が広がる~~そんな法律の話、ちょっとカッコよくないですか?

 

 

 

 

2025年07月19日